今日の社会には同和問題をはじめ様々な人権問題が存在しています。これらの問題の解決のためには、違いを認めあい、差別をしない、許さないという考え方が重要です。
この作品を通じて、人と人のつながりを大切にし、ひとりひとりの人権が尊重される社会づくりについて考えてみたいと思います。
物語は、交通事故で両親を失い、自分自身も障害を持つようになった女子中学生が、未だ会ったことのない花火職人の祖父に会いに出る冒険と、それを助けるメール友達や介助犬の活躍を、美しい隅田川の花火とともに描いています。
このビデオを中学生とその保護者など多くの方々に見ていただき、同和問題をはじめ様々な人権問題についての学習を深める契機としていただきたいと願っています。
話合いのポイント
1. 一志は、友達の宏へのいじめに対して、関わったら自分もいじめられると、宏を避けていた。このときの宏の心境について話し合ってみよう。
また、一志は今回の体験を通じて、どうして自分の態度を改めるようになったのだろうか。
2. 一志の家での会話には、百合子の両親が家柄の違いを理由に結婚を反対されたことや、一志の姉が同和地区出身者との結婚を反対されたことが出てくる。このような差別の問題について話し合ってみよう。
3. 介助犬とともに東京に旅立った百合子を待ち受けていた困難を例に、体に障害がある人にとって社会が必ずしも暮らしやすいものになっていないという問題について話し合ってみよう。
4. 全体を通じて、人と人とのつながりを大切にし、ひとりひとりの人権が尊重される社会づくりのために、どうしたらよいかを考えてみよう。
あらすじ
「私は高崎百合子、札幌の白雪中学の一年生です。私は、小さい頃の事故で足に障害があるため、差別やいろいろな人権問題に関心があります。メールで話し合いませんか。」
というパソコン通信でメール友達になった東京の中学生、坂井一志は、友達の宏がいじめられているのに、関わったら自分もいじめられると思い、宏を避けている自分に悩んでいた。
そんなある日、百合子は一志が送った隅田川の花火の写真を見て、「おばあさま、ごめんなさい。私、どうしてもおじいちゃんの花火が見たいの…」という手紙を置いて、介助犬のジョーとともに東京に旅立ってしまった。
母の故郷である東京には、花火職人の祖父・遠山信三がいる。
百合子の両親の結婚は、高崎家の祖母・芳恵に「職人の娘は高崎家に相応しくない」と猛反対された。そのため信三も、「そんなところへは嫁にやれない」と反対し、結婚を認めなかった。だから、百合子は両親が交通事故で亡くなった後も、まだ信三に会っていない。
百合子の母は、いつも「おじいちゃんの花火は、とてもきれいで、見る人みんなを幸せにする」と話していた。
ジョーを連れての一人旅には、いろいろな困難が待ち受けていた…。
東京に着いた夜、一志は百合子に、自分の悩みを打ち明ける。百合子も自分の境遇や、両親の結婚のことなどを話す。
二人は障害者差別のこと、部落差別のこと、アイヌ民族差別のことなど、いろいろ話し合う。
隅田川の花火大会の日、二人は信三のもとを訪れる。
「おじいちゃん……」おそるおそる声をかける百合子を目の前にして戸惑う信三……。
「百合子……」突然、信三の顔がくしゃくしゃになる。信三の胸に飛び込む百合子。抱きしめる信三。
傍らには、いつのまにか百合子を心配して北海道から出てきた祖母が立っている。
芳恵と信三が近づく。緊張する一同。最初に信三が芳恵に言葉をかける。「よくきなすった……」
深々と頭を下げる芳恵。長い間のわだかまりが消えていく。
皆の頭上に、見事な大輪の花が開く。
「わー、きれい。おじいちゃんの花火だ」
母が言ったとおり、おじいちゃんの花火は、皆を幸せにする……。