①患者とコミュニケーション
医療や看護に携わる専門家にも性の多様性への理解が求められますが、LGBTs のいずれかであると明確にわかったうえでの診療経験はない、という医療従事者も多くおられるでしょう。本来、性的指向や性自認をカミングアウトするかしないかを決めるのはご本人の意思によるものですが、医療現場ではそういったプライベートな情報に接することも少なからずあり、医療従事者ひとりひとりが性の多様性について正しい知識と認識を持った上で、専門職として患者と接することが求められます。
この巻では同性愛者や性別違和を持つ患者とのコミュニケーションにおける注意点をドラマで描きます。先輩看護師との OJT(On the Job Training)のドラマを通して、無自覚に発せられた言葉が相手を傷つけていないかを考えます。
②誰もが安心して通える病院づくり
誰もが安心して受診できる医療機関であること、そのための環境づくりが求められますが、LGBTs の人々にとっては、気軽に受診・通院できないような様々な障壁が存在します。とりわけ、身体の性と性自認が異なり、性自認に基づいて生活したいと思うトランスジェンダーにとっては、男女の区別が前提になっていることが多い医療機関へ行くことをためらってしまい、容体を悪化させてしまう場合もあります。
この巻では、LGBTs 当事者やその家族が通いやすい病院や診療環境づくりをドラマ仕立てで考えます。待合室の呼び方から病衣などの問題をはじめ、医療現場で起こりがちな様々な課題を扱い、実践的な取り組みや診療コミュニケーションの在り方に具体的なヒントを示すとともに、医療従事者が性の多様性を学ぶ必要性を喚起します。