結婚とは「両性の合意のみに基いて成立」するものであると、憲法にも定められています。しかし、被差別部落出身者との結婚に関する差別意識は、現在も根強く残っている状況です。
交際相手が同和地区出身者の場合は結婚しないと考える人や、反対の意思を示す親族が未だに存在するのです。また、親や親族の中には、調査会社などを通じて、相手が被差別部落出身かどうか身元調査する例も少なくありません。
私たちの社会には、依然として家柄や出身などを重視する人がいて、こうしたことにこだわるものの見方や考え方が、部落差別(同和問題)をはじめとする様々な差別を生む土壌となっています。
このドラマは、実際に起きた複数の事例をもとに描かれています。
■反発を示され…
歩美は被差別部落出身の大毅と交際し、将来についても真剣に考えている。父親・准一の誕生日、大毅との交際を両親に打ち明けると、返ってきたのは父親からの否定的な言葉だった。
親の許可を得ず結婚しようと言う歩美。「部落のことも解放運動のことも知ってほしい。もうちょっと向き合ってみよう」と、大毅は優しく諭すのであった。
■准一の過去
一方母親の恵子は、二人に歩み寄ろうと、大毅が活動の拠点としている解放運動の事務所にて、大毅と対面を果たす。その熱心で誠実な大毅の様子と、周りの人々の温かさに、「歩美が苦労するのではないか」と心配だった恵子の心が動くのだった。
その後も独自で勉強し、部落問題への理解を深めた恵子は、准一への説得を試みる。
「お前は知らないんだ!」と、頑なな准一。実は、実妹の仁美は部落出身者の元へ嫁ぎ、両親から勘当され、生き別れ状態となっていたのだった。
「仁美は俺たちよりも部落の人間を選んだんだ。歩美に同じことはさせない」
■仁美の決意
恵子から仁美の存在を聞かされた歩美と大毅。二人は仁美に会ってみようと、居場所を突き止めて訪れる。
「私も仁美さんと同じ状況になるかもしれない! 覚悟はできている」と言う歩美に、「この状況になって初めて、どういうことかわかるんだ」と独り言のように言う仁美。
「俺は、お義父さんとの関係も諦めてほしくないんです」と、歩美と両親との関係を慮る大毅を見て、仁美は「もう私みたいな思い、誰にもしてほしくない」と、歩美の実家へ行く意思を固めるのであった。
■再会
すぐ会える距離で暮らしていたにも関わらず、約30年ぶりの対面を果たした准一と仁美。
「もうやめよう。同じことを繰り返すのは」「このままじゃ歩美もいなくなっちゃうよ?」
年齢を重ねた仁美の手を握り、見つめながら、会えなかった年月の重さと意味について考え込む准一。
「初めまして、高山大毅と申します。僕は部落出身で……周りには仁美さんみたいな思いをされた方がたくさんいたんです。歩美さんには、そんな思いをさせたくないんです」
真摯に訴える大毅と、「一緒に考えていこう」と言う歩美の言葉に、ゆっくりと頷く准一なのであった。