日本の先住民族・アイヌ。かつてアイヌモシリ(アイヌの大地)と呼ばれた北海道の日高地方・平取町には、今も多くのアイヌ民族が暮らしている。アイヌ文化研究に多大な貢献を果たした故・萱野茂氏の出身地でもある。
1869年、明治新政府はアイヌ民族を「平民」として戸籍に編入し、同化政策と開拓を推し進めた。その結果、アイヌ文化は急速に衰退した。あれから一世紀半が過ぎた現在、生活スタイルを変えながらも文化を伝承し続けてきたこの地域では、現代のアイヌが快活に生きている。
ドキュメンタリーの主人公は、個性豊かな四人の「Ainu=ひと」たち。差別と貧困を経験した人、伝統的な織物を作る人、祖母のカムイユカラ(口承文芸)を聞き覚えている人、イオマンテ(熊送り)などの儀礼を幼い頃に見聞きした人。文化伝承のため地域のリーダーとして活動している。彼らは昭和から平成へと続くアイヌの変容を示す生き証人でもある。
本作は、その「ひと」たちの姿を通して、アイヌ文化の今と未来を描くドキュメンタリーである。